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Gigi Masin 04/16 @大阪 Grotta dell’ Amore

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このブログでは、ライブやレコード屋に行ったという報告も付けていくつもりでいる。私は、何時間か列車に揺られ、何ヶ月かぶりに大阪の心斎橋へと向かう。今日はGigi Masinの初来日という歴史的な出来事が待っていたから。

Gigi Masinは、昨今再評価の波にあるイタリアのアーティスト。どうやらとんでもなく良い音楽を結構長いことやってるらしいぞ、というところから火が付き、遂には来日公演に漕ぎ着けた。ファースト・アルバムの「Wind」は、アンビエントの大名作として知られ、実はSub Rosaから出ていたり、最近には国内盤も出たほどだ。(私はTSUTAYAで借りた。)ディスヒートのチャールズ・ヘイワードとのコラボ・アルバムの昨年のリイシューも大きな話題を呼んでいた。彼が脚光を浴びるキッカケとなったのはやはり、昨今のニューエイジの波をより一層熱いモノとしている気鋭レーベル、Music From Memoryからのコンピレーション「Talk To The Sea」での発掘だろう。彼は今に至るまで絶え間なく活動してきたが、これによって制作意欲が湧いたのか昨今は怒涛の勢いでリリースを繰り広げている。

今回の大阪公演のライブ会場はNewtone Recordsの隣にあるホテルの地下にあるイタリア料理屋で、どうやらここはレンタルスペースでもあるらしい。ギリシア彫刻のような石像も配置されていてどこかヴェイパー的なミステリアスな空気を感じた。洞窟のような空間、音響も良さそうで、いい場所だ。今回はほぼ満員御礼と言っても差し支えないほどに人が詰まっていた。会場に100人はいただろうか。この手のアーティストのライブにしてはかなりの人数だ。昨今の再評価は本当に大きかったのだろう。

さて、曲名までは覚えていないのだが、何曲かアルバム収録曲の中からも演奏してくれた。やや薄暗い部屋の中、ラップトップからトラックを流し始めるとピアノに向き合った彼の音楽には人柄が滲んでいた。予定調和の連続とも言えるような運命的な演奏。絹のように滑らかで、繊細な音を紡ぎながらも、まるで拳で弾いているような力強いタッチで描く情景的な音楽。ピアニッシモとフォルテを行き来するような情熱的ながらも慈しみに満ちている。実際、彼の音楽はかなり感情的で、指というより手のひら全体を使って弾いているようにも見えた。彼の音楽にはやはり彼自身の誠実さのようなものも如実に表れていて、短調の暗い音楽ながらも、聴く側にはその心を委ねるに足りる安らかな感情が齎される。

彼の音楽にはドローン的な側面もあり、ラップトップから発される電子音やビートも私たちのパルスと重なってフロアに満ち溢れ、彼の奏でるグランドピアノの音色をより味わい深く彩っていた。所謂、バレアリックのようなエキゾチックな電子音楽をフィーチャーし、ノンビートというよりはリズミックな展開から起伏に富んでいたりと、退屈しない。一時間超に渡った演奏、最後はペダルを踏み、湿った鈍い低音を響かせて演目を終了した。アンコールは無し。これほどの演奏を前にアンコールを望むまでもないと言ったところか。一指違えること無くカンペキな音楽だった。機会があれば是非もう一度見たいと言ったところだが、いつの話になるだろうか。しかし、流石に思い残すことは無い。握手もしたし、サインも貰った。「最高」というひとことに尽きる。。

この公演は、4/18の東京公演にも続く。あなたもこの機会に是非、ご覧になられてはいかがだろうか?

 

4/18火 東京 Shibuya WWW | Gigi Maisn – balearic state -
OPEN 18:30 / START 19:00
ADV ¥3,300+1D / DOOR ¥3,800+1D
Ticket Outlet: e+ / Lawson [L:72573] / RA / WWW店頭
Live: Gigi Masin / UNKNOWN ME / Will Long
DJ: Chee Shimizu / COMPUMA *New Age set / 橋本徹
more info: http://www-shibuya.jp/schedule/007625.php

Turinn - "18 1/2 Minute Gaps" (Modern Love)

Love104 dist preview

このネクストレヴェルはもはや、あのSquarepusherAutechreの域まで達する驚異を孕んでいる。Andy Stottらインダストリアル・テクノの覇者達を擁するUK名門Modern Loveより放たれた新たなる刺客は今までとひと味違う、Alex Lewisというまだ名も知れぬ新人だった。レーベルいわく「マンチェスターのニュージェネレーション」とのことだ。BoomkatのRIYLにMove DLorenzo SenniKassem Mosseともあるが、言ってみれば、彼らの音楽をも越えた次元にこのベースミュージックはあるんじゃないだろうかとさえ感じる。"熱量"と"強度"が確立されているんだ。

蓋を開けてみるとこれまた万華鏡のように表情を変えてくれるから爽快極まりない。デトロイト・マナーの高速なリズムトラックから、人里離れた廃工場の中で行われる解体儀式のようなダーク・インダストリアル、黒光りするグルーヴに乗せて、僅かな「間」を埋め尽くすレイヴ感満載なアッパー・ハウスまで幅広いジャンルへと挑戦し、その懐の深さを見せつけてくれる。

Alchemy Masteringでのカッティングということもあり、マスタリングも秀逸でロウの出方から、重低音の効き具合もハンパじゃない。音響空間を支配するのは、残響音の心地好さとアシッド極まりない恍惚の鱗粉だろう。有機的かつ無機質という相反するテクスチャーを同居させたこれほどまでに異質なベースミュージックをこうも容易く捻り出すとは、Willowや今後リリースを予定されているCrowwと併せマンチェスターの現行シーンの熱さが物語られている。恐るべし、マンチェスター。一発目でこれなので、次はどんな爆弾を投げ込んでくるのか、今から楽しみでしょうがない。

Upgrayedd Smurphy - "HYPNOSYS" (R-CH-V)

こういう如何にもなジャケを待っていた感があるよね。Leavingにも名を連ねるメキシコのアーティスト、Smurphyの手によって設立されたと思われるR-CH-Vからは、(Smurphyが死に絶え新たに生まれ変わった)彼女の新名義による最新作が発表されることとなった。こちらはD/P/Iのリリースも抱えていて、アレックス自体も運営に関わっている模様。

さて、冒頭の英文によれば、このアルバムは催眠作用を通過する過程のミュージカル的な解釈となっているらしい。そして、彼女の住むメキシコシティという大都市の喧騒や混沌といったものをフィーチャーしている。数車線にも区切られた道路は排気ガスを垂れ流す車でごった返し、露天では海賊MP3が詰め込まれたUSBが当然のように売り捌かれていく。人々の生活とそのロマンスと社会の闇と血生臭さが錯綜するこの世界有数の大都会は、人間社会のサラダボウルのようなものなんじゃないだろうか。戯画的で目まぐるしいほどの展開が聞き手を待っている。

ここには挑戦的で屈託のない笑顔が垣間見えている。ドープなコンテクストをふんだんに含んだ無数の有機的なサンプリングを効果的に用い、アシッドであり、フットワークの効いたロウなベースが力強く波打ち、急激な音風景の変化の中、気を違えたかのように縦横無尽に駆け巡る。アンビエント/ドローン的であったり、テン年代ニューエイジを彷彿させられる場面もあったりと起伏に富む。この滑稽で、非常に抽象的で、突然変異的な音響風景では、ここには何もかもがあり、何もかもがないという人類の実験場の混沌を見事に体現するに至っていると言えるだろう。

ストリートへと溶け込み、ドラムンベースやジャングルをも通過したベースミュージックの強靭さは然る事乍ら、土臭く、全てを見通したかのような眼力が感じられる。彼女が今まで作ってきたグリッチ・ポップやサイケ・ビートの発展的回収とも言えるだろう。ヴァイナル化一歩手前の荒さや衝動にもまた惹き付けられる。聴き手の誰もがズブズブ沈んで虚無に還る様が伝わってくるような感覚もある。メディテーティヴとは言い難いがこれもコンセプトの狙い通りある種のインナートリップ体験となるに違いない。個人的にカセットで出して欲しかった一作だ。