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Smegma - "Self​-​titled" (Post-Materialization Music)

Los Angeles Free Music Society(LAFMS)実験音楽を語る上で絶対に外してはならない名前だ。Destroy All MonstersThe Residentsと並び、その音楽集団の名前は多くの前衛音楽ファンに知れ渡っている。ジャパノイズにも多大なる影響を及ぼしたとされるAirwayのJoeとRickのPotts兄弟、Chip&Susanの Chapman夫婦などに始まる彼らの系譜は、まるでキャプテン・ビーフハートフランク・ザッパに続くかのようにLAのシーンに現れ、70年中期に始まり、今に至るまで、変容し、Bruce LicherJoseph Hammerなどさらなる脈を得て拡大し、膨大なリリースを続け、日本のアーティストでは、工藤冬里灰野敬二とのコラボレーション、果てはPANにまでも連なり、未だにその全貌を把握するのは困難とされている。ソレは昨年のLAFMS BOX BOXや今年のAnother Timbreからの二作の再発/発掘、LAFMSを象徴する大名作、Le Forte Fourの「Bikini Tennis Shoes」の先日のリイシューを経ても尚だ。というところまではLAFMS語りの常套句。

今回取り上げるのは、The HatersことGX Jupitter-LarsenやSon Of Halami(Feeding Tube、Night People)などのエクスペリメンタル作家が名を連ねるロシアのPost-Materializationから発表されたLAFMS中核バンド、Smegmaの10年代のライブ音源である。

私自身は、Smegmaの作品には3、4作しか触れられていないため、彼らのことを扱っていいのか迷うが、このブログでメインに紹介するであろう現代のエクスペリメンタルを聞いている人にも古くから続く前衛音楽の波を体験してほしいとの思いで筆を取った。

こちらは、デジタル版とカセット版、又は7インチ+カセット+ブックレットのセットのいずれかを購入出来る。LAFMSにまつわる貴重な資料としても、このブックレットは非常に貴重だろう。しかもこちらのバージョンは25部限定とレアな模様だ(しかし現時点でかなり残り部数に余裕がありそうにも見えるが。)バンドキャンプのコメント欄にはLAFMSの歴史と彼らへの愛についてのみびっしりと書かれているため、作品の詳細はあまり把握出来ないが、2011年と2015年のライブ音源らしい。

なんと言ってもこの魅力はサイケデリックの極北を行くとでも言えようフリーク・サウンドに尽きる。この音楽の在り方は非常に多様で深いバックボーンが窺い知れるだろう。ガレージ・ロック、フリージャズ、室内楽密教音楽、エレクトロ・アコースティック、非音楽までも行き来しつつ、しっかりと頑丈な展開を持って突き進み、滝のように狂乱するLSDの雨が雷を引き連れて暴れ回りとにかく止もうとはしない。演奏が微塵も揺らぐことも無いのは見事としか言いようがない。ストイック過ぎる。微睡みと混沌が同居する麗しいカオスの中、LAFMS自体が変容を続けてきたように、この音楽も天地の如く季節の如く表情を変え、さんざめいては、ときおり魅せる幽玄なサウンドスケープには年輪の入った知性をチラつかせ、聞く者の心は完全に打ち砕かれる。峠を越えれば視界良好ということも無く、これぞ、端境の音楽の源泉といったところか、私もLAFMS初心者ながら一ファンとして彼らの活躍がこれからも楽しみでならない。