Luvit Tex Take Mix

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Upgrayedd Smurphy - "HYPNOSYS" (R-CH-V)

こういう如何にもなジャケを待っていた感があるよね。Leavingにも名を連ねるメキシコのアーティスト、Smurphyの手によって設立されたと思われるR-CH-Vからは、(Smurphyが死に絶え新たに生まれ変わった)彼女の新名義による最新作が発表されることとなった。こちらはD/P/Iのリリースも抱えていて、アレックス自体も運営に関わっている模様。

さて、冒頭の英文によれば、このアルバムは催眠作用を通過する過程のミュージカル的な解釈となっているらしい。そして、彼女の住むメキシコシティという大都市の喧騒や混沌といったものをフィーチャーしている。数車線にも区切られた道路は排気ガスを垂れ流す車でごった返し、露天では海賊MP3が詰め込まれたUSBが当然のように売り捌かれていく。人々の生活とそのロマンスと社会の闇と血生臭さが錯綜するこの世界有数の大都会は、人間社会のサラダボウルのようなものなんじゃないだろうか。戯画的で目まぐるしいほどの展開が聞き手を待っている。

ここには挑戦的で屈託のない笑顔が垣間見えている。ドープなコンテクストをふんだんに含んだ無数の有機的なサンプリングを効果的に用い、アシッドであり、フットワークの効いたロウなベースが力強く波打ち、急激な音風景の変化の中、気を違えたかのように縦横無尽に駆け巡る。アンビエント/ドローン的であったり、テン年代ニューエイジを彷彿させられる場面もあったりと起伏に富む。この滑稽で、非常に抽象的で、突然変異的な音響風景では、ここには何もかもがあり、何もかもがないという人類の実験場の混沌を見事に体現するに至っていると言えるだろう。

ストリートへと溶け込み、ドラムンベースやジャングルをも通過したベースミュージックの強靭さは然る事乍ら、土臭く、全てを見通したかのような眼力が感じられる。彼女が今まで作ってきたグリッチ・ポップやサイケ・ビートの発展的回収とも言えるだろう。ヴァイナル化一歩手前の荒さや衝動にもまた惹き付けられる。聴き手の誰もがズブズブ沈んで虚無に還る様が伝わってくるような感覚もある。メディテーティヴとは言い難いがこれもコンセプトの狙い通りある種のインナートリップ体験となるに違いない。個人的にカセットで出して欲しかった一作だ。