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高橋悠治 - "めぐる季節と散らし書き子どもの音楽 Circle of Seasons and Dispersed Calligraphy; Music for Children"

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イメージを追うのではなく その時の感じ からだがかすかに動く感覚を覚えておく その感覚は 呼び起こされるたびに おなじイメージを作るとは限らない 決ったイメージを作ることを目標としないで 想像力をあそばせておく こうすれば 固定したイメージを再現する作業にしばられないで おなじ道を通っても 見えてくる景色はいつもちがうかもしれない

(中略)

一つの句を二つに切って 片端を逆に付けてみる この取合せ「行て帰るの心 発句也」(くろさうし) 平安古筆の返し書きは 紙の中ほどからはじめて 途中から前にもどって行外の余白に続ける

伝統の技法をまなんで ちがう領域に持ち出して使えば 曲解もあり 実験でもある 躓きは飛石となる 

2016年10月 – 水牛のように

 

本作は

・ヘンリー・パーセル(1959-1695):組曲 第七番 ニ短調

・ルイ・クープラン(1626-1661):シャコンヌ・パヴァンヌ

高橋悠治 散らし書き

ジョン・ケージ(1912-1992):四季(ピアノ版)

バルトーク・ベーラ(1881-1945):10の易しい曲

エリック・サティ(1886-1925):コ・クオが子どもの頃(母のしつけ)

・フェルッチョ・ブゾーニ(1866-1924):子どものためのソナティナ

イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882-1971):五本指

・アントン・ヴェーベルン(1883-1945):子どもの曲

 

との構成となっている。

 

 

 これらは、タイトルにおける「めぐる季節」「散らし書き」「子どもの音楽」の3つの主題を表現するために弾かれた楽曲ともいえる。

 

安直なイメージを伝えると、序盤は淡々としたバッハのピアノ楽曲のようであり、中盤の高橋やケージの楽曲は難解な現代音楽、後半の楽曲は子どもの為という制約の中でうまれた実験的なピアノ楽曲だ。

 

特に、新たに書かれた高橋の「散らし書き」は、2017年7月タワーレコード渋谷店で行われたインストアイベントでの話によると、古語の一本書きの文字を横に置き換え、その形をそのまま音符へと変換し、それにそって伴奏を添えたと、わざわざ恐ろしい制約のなかで面倒な翻訳的作業を行い、ovalやAutechreのような自動作成楽曲のような、制約のない楽曲を生み出した。

 

その意味とは何か。

 

冒頭で引用した高橋による文が一つのヒントとなる。自己を解体するために、あえて伝統的な材料を用いて、再度全く元の素材とは別な方法で再構成することにより、解体された元の文字の意味と鳴らされる音から、従来の価値観から逸脱し、音とはなにかを、別の形で知ることができる。

 

それは、制約のなかでの子どものための楽曲においても同義といえよう。リズムや和音理論などで縛るのでなく、弾く鍵盤そのものを狭めることで、自由という制約から解き放され、また新たな形の音を知ることができる。