THE ROLLING GIRLS - ロリガ・ロック・ベスト! ~Songs of the mob, by the mob, for the mob~
久々に帰った北埼玉の、妙に広々してるGEOにふらりと入店した。
取り扱ってる映画も音楽も、どれもこれもが、相変わらずありきたりで、
どうしようもなく、つまらなかった。
店内からはアニソンが流れてくる。
いつの間にかしょうもない風景の一角に深夜アニメも紛れ込んだのか。
何だかなと甲高い声の番宣を店内で聞きながら、
その小汚い店内をふらついていた。
「気が狂いそう」
相変わらずの甲高い声だが、流れてきたのはブルーハーツ。
ゼロ年代末、十代の頃にパンクロックとして
ブルーハーツを聴いてたやつなんて殆どいなくて、
(パンクロック好きはもっと尖ったものを聴いていた)
日本一いなたい埼玉のFM番組から
トラックの運ちゃんへの応援ソングとして流れている体の、
どうしようもなください音楽。でも、不意に流れる1節が強烈だったりする。
ただ今流れているそれは、
どうせブルーハーツのカバー商法の一貫にアニメが便乗しただけの、
くだらない代物なんだろう、
そう思いながら「人にやさしく」とともに聞こえてきたアニメの番宣に苦笑した。
今流行のご当地アニメ。しかも舞台は埼玉所沢かよ。
それにブルーハーツときた。笑うしかない。
そうしてブルーハーツが使われたご当地アニメ「ローリング☆ガールズ」は、
アニメ放送のリアルタイムでは結局一度も観なかった。
しかしひょんなことから、
「ローリング☆ガールズ」がみたくなったのは放送終了して半年ほど経ったある日。
huluをつかって、一気に観てしまった。
話はご当地アニメというよりかは、サイケなロードムービーという体というのが近い。
バイクで女の子が移動しながら、その場その場の短編がオムニバスとして繋がる。
正直わかりやすい直線的な話じゃなくとっちらかっている。
だけど、みじかい5分くらいの1楽曲にぐっと心惹かれるように、
短編のなかで、無性にエモーショナルな気分になってしまうのだ。最終回も。
そしてまた選曲がよい。OPが「人にやさしく」ではあるが、EDが「月の爆撃機」。
1話挿入歌が「1000のバイオリン」。最初にでたシングルでも、
ちゃんと、月の爆撃機の次に1000のバイオリンという順で収録された。
ちゃんとブルーハーツのライブセットリストや、アルバム「STICK OUT」通りである。
演奏もチャチな打ち込みじゃなくて、しっかりとバンドサウンド。
実は宇宙人という設定の、モッズコートを着たちいさい女の子が出てくるのだが、
そいつがまたかわいい。
その子の声で歌うブルーハーツが、かなりいい。かわいいからじゃなくて、
青臭い少年のようなそれの、
アニメ的に成熟した声とはズレたその感じが、
かなり楽曲のトーンと合致してるのだ。
アニメビジネス的に、シングルとアルバムとで
カラオケ音源とセットで小出しにしてきた売り方は汚いけれど、
カバーされた楽曲そのものは誠実だった。
結局ロリガに触発されて、ようやくアルバムでブルーハーツの音源も聴いた。
自分自身、青臭い十代でなくなって、バンドやレコード屋の店員もうまくいかなくて、
いなたい埼玉のハズレの家をとびだして(仕事もやめて)、
東京で新たな生活をはじめた。
はじめたのだけれど、結局、
会社でもまれる貧困サラリーマンになってしまっていた。
いなたい糞みたいなラジオやロックから逃れたというのに、
結局まわりまわって、ブルーハーツで鬱憤を晴らす自分がいるのだ。
だからこれを聴けばいいと思う。ようやく1枚のCDに楽曲がまとまったので。
これを聴いて、残業から帰ってきた深夜に一人で、国道を疾走すればいい。
おっさんになってしまったゼロ年代のティーン・エイジャーよ。