Luvit Tex Take Mix

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Kevin Drumm - “Old Connections” (Self Released)

90年代から活動し、ハードなノイズからドローン、即興演奏まで幅のある音を聴かせてくれるケヴィン・ドラム。その作品リリースはEditions MegoErstwhileなど比較的大きなレーベルから自主リリースまで加えると膨大な数に上り、なかなか全貌を掴むのは難しいです。

今作は彼自身のbandcamp*1で今年に入ってから公開された*2作品。現時点ではデジタルのみのリリースでフィジカルでは出ていないと思われます。

内容はガサゴソといった物音と和声的な色合いが感じられない持続音が重なるモノトーンなアンビエント/ドローンといった趣。このブログでも先に紹介されているGiuseppe Ielasi3 Pauses*3や昨年Entr'acteからリリースされたJoachim Nordwall『THE MESSAGE IS VERY SIMPLE』などとも通じる部分のある作品に思いますが、前者ほどこのスタイルを突き詰めた感じもなく、また後者ほど緊張感の高いものでもないので案外聴きやすい印象です。

制作に関しては、オーディオジェネレーター、デジタルカメラによるレコーディング、コンピュータによるアシスト、との記載がありますが、持続音の部分においては楽音に近い安定したピッチが感じられるような音色はあまり用いず、モーターの稼働音や水道管の音、排気音や虫の鳴き声などをピッチダウン加工したような像がボヤけた音が曇った空間に木霊するようなイメージなので、徹底的に角を落としたノイズドローンとも言えるかもしれません。

彼の作品は単純に数が多くどこから手をつけていいやら…といった感じであまりチェックできていないのですが、こういった作風もあるのだなと少し驚いた一作でした。彼のbandcampにアップされる作品は正直クオリティに首を傾げるものや、評価に困るものも多い印象だったのですが、これは久々に当たりを引いた感があります(笑)

*1:過去の音源や新作など主にデジタルで頻繁にアップされていて膨大なカタログ数になっています。昨年その中からドローン寄りのものをセレクトした6枚組ボックスがSonorisからリリースされたことで注目された方も多いのではないでしょうか。

*2:bandcampの作品ページでは昨年12月リリースとなっていますが、公開されたのは今年に入ってからだったと思います。多分……。

*3:今作と同じく20分を超える時間の中で持続音のみよるパートや環境音/物音のみによるパート、それらが重なったパートなどが切り替わっていくような構成がとられています。ただ『3 Pauses』はパートの切り替えがクッキリとしていて実質別々の曲を1トラックとして収録したような感触である(1曲毎の再生を回避するため?)のに対し、こちらはひとつの曲としての輪郭を維持することに主眼が置かれているように感じます。

K2 / Yasuhito Fujinami - "S/T"

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ノイズ・ミュージックという限りなく快楽的で、そして限りなくエクストリームな音楽はいったい何処へと連なっていくのだろうか。多くの人のように非常階段やメルツバウがノイズへの入口だった私も、それから何年か経って、ジャパノイズと称された日本のノイズに始まり、海外の現行のノイズに触れるようになっても、ノイズミュージックの深淵へと辿り着くにはまだまだ知識も浅ければ、聞き足りてもいない。未だに「ノイズを聴く」という行為の纏うある種の「特別」のようなものを拭い切れてはおらず、まだまだ私も私の耳もケツの穴も青臭い。

K2とYasuhito Fujinamiの二名によるこのセルフタイトル・スプリットアルバムは、終わりに近づくテン年代の後半にも留まることを知らぬノイズの勢いをまさしく音で体現した重要な作品として記されるべきだろう。説明は要らないと思うが、日本のノイズを語るうえで外せない男、八十年代初期から膨大なカセット作品をリリースし、今やジャパノイズの帝王の一人として君臨するのが草深公秀によるK2。そして、今回、ここでフォーカスを当てたいのは、ハンガリーのノイズレーベル、綾波レイのポスターをレコードに付けてくることでお馴染みThe RitaBlack Leather Jesusといった現行ノイズ大御所も擁するThe Level of Vulnerabilityからのリリースで私もその名を耳にすることとなった埼玉のノイジシャン、Yasuhito Fujinamiである。

彼は2015年頃から膨大な数のカセットとデジタル作品をリリースし始め、Macronymphaの旧友Armenia主催のBizarre Audio Artsや近年ディープな盛り上がりを見せるHarsh Noise Movementなどから作品を発表するなど活動の拡大に余念が無い。こちらのアートワークは、The New Blockadersの「Le Retentir Non」やUrashimaのコンピ「Valkoinen Kohina」などでデザインを務めるコラージュ・アート作家、Ewan Aparicioが担当していて、マニアの必涎のアイテムといったところか。

こういったことを書くのもアレなのだが、この人のツイッターからも感じられるようにYasuhito Fujinamiのノイズには暴力性というよりも、音楽への探究心や誠実さ、人柄も汲み取れるような俗ならぬ魂が込められているように私は思う。ノイズをただの「騒音」として終始せず、深く己をみつめ、省み、繊細な感情の機微を表現する絵筆として向き合っている姿が-音楽を音楽として作り手自身看做していなかったことも多々あった一環のパフォーマンス・アートとしての領域から、純粋な音楽としてのノイズへと向かっていく姿が私には見えるような気さえしている。

Yasuhito Fujinamiの音楽はおしなべて未来志向であって、もちろん過去へのリスペクトも徹底されている。一貫して音の粒も細かくクリアになった近未来的なテクスチャーは新鮮なものに感じられ、ノイズという音楽を作る人の世代も変わりつつあるのだなと認識される。Kazuma KubotaPuce Maryといった00年代以降のオルタナティヴなノイズの流れにも共振するようなポスト・ノイズ的な音風景は、ノイズのアンビエント的側面を強調して、静謐さすら覚えるように包容力を持ち、従来のような無機物から生命の神秘を感じさせる有機体としての躍動感を以て、綿密に敷き詰められている。霊性さえ感じるその神聖なタッチは、壊すのではなく、構築していくような感覚だ。新しい、この人のノイズを私はこれからももっと聴いてみたいと思う。「ポスト・ノイズ」が無かったとしても、日々の生活の一部として。

THE ROLLING GIRLS - ロリガ・ロック・ベスト! ~Songs of the mob, by the mob, for the mob~

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久々に帰った北埼玉の、妙に広々してるGEOにふらりと入店した。

取り扱ってる映画も音楽も、どれもこれもが、相変わらずありきたりで、

どうしようもなく、つまらなかった。

店内からはアニソンが流れてくる。

 

いつの間にかしょうもない風景の一角に深夜アニメも紛れ込んだのか。

何だかなと甲高い声の番宣を店内で聞きながら、

その小汚い店内をふらついていた。

 

「気が狂いそう」

 

相変わらずの甲高い声だが、流れてきたのはブルーハーツ

ゼロ年代末、十代の頃にパンクロックとして

ブルーハーツを聴いてたやつなんて殆どいなくて、

(パンクロック好きはもっと尖ったものを聴いていた)

日本一いなたい埼玉のFM番組から

トラックの運ちゃんへの応援ソングとして流れている体の、

どうしようもなください音楽。でも、不意に流れる1節が強烈だったりする。

 

ただ今流れているそれは、

どうせブルーハーツのカバー商法の一貫にアニメが便乗しただけの、

くだらない代物なんだろう、

そう思いながら「人にやさしく」とともに聞こえてきたアニメの番宣に苦笑した。

今流行のご当地アニメ。しかも舞台は埼玉所沢かよ。

それにブルーハーツときた。笑うしかない。

 

そうしてブルーハーツが使われたご当地アニメ「ローリングガールズ」は、

アニメ放送のリアルタイムでは結局一度も観なかった。

 

しかしひょんなことから、

「ローリングガールズ」がみたくなったのは放送終了して半年ほど経ったある日。

huluをつかって、一気に観てしまった。

 

話はご当地アニメというよりかは、サイケなロードムービーという体というのが近い。

バイクで女の子が移動しながら、その場その場の短編がオムニバスとして繋がる。

正直わかりやすい直線的な話じゃなくとっちらかっている。

だけど、みじかい5分くらいの1楽曲にぐっと心惹かれるように、

短編のなかで、無性にエモーショナルな気分になってしまうのだ。最終回も。

 

そしてまた選曲がよい。OPが「人にやさしく」ではあるが、EDが「月の爆撃機」。

1話挿入歌が「1000のバイオリン」。最初にでたシングルでも、

ちゃんと、月の爆撃機の次に1000のバイオリンという順で収録された。

ちゃんとブルーハーツのライブセットリストや、アルバム「STICK OUT」通りである。

演奏もチャチな打ち込みじゃなくて、しっかりとバンドサウンド。

 

実は宇宙人という設定の、モッズコートを着たちいさい女の子が出てくるのだが、

そいつがまたかわいい。

その子の声で歌うブルーハーツが、かなりいい。かわいいからじゃなくて、

青臭い少年のようなそれの、

アニメ的に成熟した声とはズレたその感じが、

かなり楽曲のトーンと合致してるのだ。

 

アニメビジネス的に、シングルとアルバムとで

カラオケ音源とセットで小出しにしてきた売り方は汚いけれど、

カバーされた楽曲そのものは誠実だった。

結局ロリガに触発されて、ようやくアルバムでブルーハーツの音源も聴いた。

自分自身、青臭い十代でなくなって、バンドやレコード屋の店員もうまくいかなくて、

いなたい埼玉のハズレの家をとびだして(仕事もやめて)、

東京で新たな生活をはじめた。

はじめたのだけれど、結局、

会社でもまれる貧困サラリーマンになってしまっていた。

いなたい糞みたいなラジオやロックから逃れたというのに、

結局まわりまわって、ブルーハーツで鬱憤を晴らす自分がいるのだ。

 

だからこれを聴けばいいと思う。ようやく1枚のCDに楽曲がまとまったので。

これを聴いて、残業から帰ってきた深夜に一人で、国道を疾走すればいい。

おっさんになってしまったゼロ年代のティーン・エイジャーよ。